送り主は、恩師のアンドルー・シュレーダー博士である。
悪魔の箱を手に入れたという博士の言葉に不安を覚え、私はルークと共に博士の部屋を訪ねる事にしたのだった。
博士の部屋にあった切符を手がかりに、私とルークはモレントリー急行に乗り込んだ。
細部まで行き届いたその豪華さには目を見張るばかりだが、博士はこの列車で、どこに向かっていたのだろう。
モレントリー急行の食堂車はやはり大変な盛況ぶりで、席が空くのを待ってみたものの、すぐには座れそうにない。
ウエイターさんに勧められたとおり、混雑が落ち着くのを待つ間に展望車両へ言ってみる事にしよう。
モレントリー急行の展望車両からの景色は素晴らしく、思わず息をのんでしまうほどのものだった。
ロンドンでは見る事の少ない風景を見ていると、時が経つのを忘れてしまいそうだ。
しかしこうしてばかりもいられない。
悪魔の箱の調査を続けることにしよう。
列車内で、ローズ夫人という人が、ぼうやがいないと言って困っている。
残されていたのは小さなクツが一足だけのようだ。
そんな小さな子供が、1人でどこに行ってしまったのだろう。
今までの状況から考えると、ぼうやというのは犬の事なのかもしれない。
そういえば車内で犬を抱いた少女を見かけた覚えがある。
彼女の足取りを追ってみよう。
ぼうやをつれていたのがアロマだったとは驚いた。
彼女の同行を許可したものの、女性を旅の危険にさらすのはやはり気がひける。
とりあえず、今は夫人にぼうやの無事を知らせに行く事にしよう。
急な停車に驚き、外へ出てみると故障車両が線路をふさいでいた。
連結をうまくすれば、進路をあける事ができると思うのだが。
整備士さんに話してみよう。
列車はドロップストーンという名の駅に停車した。
町は今、生誕50周年のお祭りの最中らしい。
出発まではまだ時間があるようだ。
この町で、悪魔の箱の情報を集めてみることにしよう。
祭りのメインイベントは、広場で行われる牛の品評会だという。
確かに面白そうなイベントだ。
ルークやアロマも興味を持ったようだし、品評会の時間には、この広場に戻ってくる事にしよう。
町の領主であるアンダーソン家で働くメイドのドロテアさんの話によると、領主の娘であるカティアさんが一人旅を計画しているという。
使用人たちが皆でその旅を応援していると言うが、父親に黙って、そんな計画を立てるのは、一体何のためなのだろう。
牛の品評会の会場で、アンダーソン伯爵と話す機会を持つ事ができた。
それによると、彼の義理の母親も悪魔の箱を探していたそうだ。
伯爵にもその目的は分からないという事だったが、やはりこの町はどこかで悪魔の箱と深くつながっているようだ。
ルークの活躍で牛の品評会も無事に終わったようだ。
町で耳にした、モレントリー急行でしか行く事ができないという幻の町のうわさも気になる。
列車に戻ったら、もう一度車内を調べてみる必要がありそうだ。
ドロップストーンの駅で、1人の少女が列車に乗り込むのを見た。
その見送りの人数から察するに、彼女がアンダーソン家の令嬢だったのだろう。
女性の一人旅は危険なはずだが、彼女は1人でどこへ向かうのだろう?
モレントリー急行の特等室で、不意に強い眠気におそわれてしまった。
ルークはその眠りの中で、車両が入れ替えられている夢を見たという。
もしや、私が眠りの中で聞いたのは、その作業の音だったのだろうか。
車内で不意な眠りから目覚めると、列車は間もなくフォルセンスの駅に到着するという。
次の停車駅は、確かレクセンブールだったはずだ。
どうやら、トンネルの中で入れ替えられたこの車両だけが、その駅に行く仕掛けだったようだ。
町の調査を始めようとしたが、アロマが体の調子が悪いという。
列車でも部屋の外に出たりと、少し落ち着きがなかったようだ。
旅の疲れのせいかもしれない。
ホテルを探して彼女を休ませよう。
アロマをホテルで休ませたが、体調が戻るには、まだ少し時間がかかりそうだ。
とりあえず、私とルークで町の調査を始める事にした。
まずは悪魔の箱に関係のありそうな場所を探してみよう。
パッポラッチ氏と車掌さんもこの町に来ているようだ。
彼らは、今までも何度かこの町に来ているらしい。
2人も何かを探しているようだが、詳しいことは分からない。
町で古い本のようなものを拾った。
しかしページにはカギがついており、一部しか読む事ができない。
表紙にかたどられたヤギの紋章が印象的だが、これはいったい何の印なのだろう。
チェルミー警部とバートンさんも、悪魔の箱の情報を集めているようだ。
博士の死について調べる内に悪魔の箱の事を知り、この町にやって来たらしい。
うまく協力できるといいのだが、警部にはそのつもりはないようだ。
町の中心にはフェルーゼン記念館という施設があるらしい。
そこに行けば、この町と悪魔の箱の関係が分かるかもしれない。
まずは記念館を目指す事にしよう。
記念館の門は閉まっており、今は中に入ることはできないようだ。
このままここにいても、いつ門が開くのかは分からない。
まずは町の人に話を聞いて、情報を集める事にしよう。
町の塔には、城の吸血鬼を見張っているという老人がいた。
塔は魔よけの装飾でいっぱいになっていたが、城には本当に吸血鬼が住んでいるのだろうか。
写真館に飾られていた町の写真は、かなり昔のもののようだった。
しかしほとんど劣化は見られず、まるで最近撮られたもののようだ。
これは普通ありえない事だが、何か特別な保存の方法があるのだろうか。
町の人々からは、悪魔の箱に関する話は、あまり聞く事ができなかった。
箱と町の関係を詳しく知るには、やはりフェルーゼン記念館に行ってみるしかなさそうだ。
フェルーゼン記念館の門は、いつの間にか開いていた。
その先の広場で、パッポラッチ氏が車掌さんと何やら言い争っている。
彼らが門を開けたのだろうか。
パッポラッチ氏の剣幕からして、よほど大事なものを探しているようだったが。
記念館の広場には、大きなヤギの紋章が刻み込まれている。
先程拾った本の表紙以外にも、私はこれを見た覚えがあるのだが…。
チェルミー警部に確認したい事ができた。
一度ホテルに戻る事にしよう。
シュレーダー博士の部屋にあった写真を確認したかったのだが、警部はその写真を失くしてしまったという。
写真を見るためには、警部の町での足どりをたどって、切れはしを集めていくしかないようだ。
警部が写真をなくした場所は、町のダウンタウンの周辺のようだ。
しかし路地の入口には気の荒い犬がいて、とても通れそうにない。
ルークの通訳によると、食べ物があれば通してくれるそうだ。
食料品店で、何かを分けてもらえないだろうか。
町の食料品店は、吸血鬼対策のニンニクでいっぱいだった。
そのにおいは、他ではかいだ事がないほど強烈なものだ。
これなら吸血鬼もひとたまりもないだろうが、その前にこちらの鼻がおかしくなってしまいそうだ。
食料品店で、骨付き肉を分けてもらう事ができた。
昨日の残り物らしいが、犬のえさには十分だろう。
さっそくダウンタウンに戻って、あの犬のご機嫌をうかがってみよう。
ダウンタウンで、写真の切れはしを探している途中、アンダーソン家のカティアさんに出会った。
彼女も何かを探しているらしいが、詳しい事は聞けなかった。
名家の令嬢がこんな所で1人、何を探していたのだろう。
フェルーゼン記念館の館長はオーナーの言いつけで探しものをしているという。
不在が多いのはそのためのようだ。
オーナーとはパッポラッチ氏の事らしいが、彼がそこまでして探しているものとは何なのだろう。
町の人の話によると、小さな紙切れが町外れに飛んで行ったという。
おそらく、写真の事だろう。
別の場所に飛ばされてしまう前に、町外れにも行ってみる事にしよう。
写真の切れはしをそろえてみると、そこには悪魔の箱が写っていた。
そのふたには、あのヤギの紋章が、大きくかたどられている。
風でまた写真の一部が飛ばされてしまったが、ここまで分かれば問題ない。
箱とこの町の関係が見えてきた。
写真を確認し、調査を再開しようとしたところに、バートンさんがやって来た。
シュレーダー博士を殺害した犯人が分かったので、ホテルに集まってほしいとの事だ。
まだ調査の途中だが、一度ホテルへ戻る事にしよう。
まさか、ドン・ポールがアロマと入れ替わっていたとは。
同行者の異常に気づけないとは、英国紳士失格だ。
本物のアロマはドロップストーンの牛小屋にとり残されているらしい。
悪魔の箱とこの町のナゾを解き、早く迎えに行ってやる事にしよう。
チェルミー警部に追われて逃げ出したドン・ポールは、その場に悪魔の箱を残していった。
こんな形で箱が手に入るとは意外だったが、これで後は箱の秘密を解くだけだ。
パッポラッチ氏は、悪魔の箱にフェルーゼン家の遺産の手がかりがあると思っていたようだ。
カティアさんがこの町に来た目的もやはり悪魔の箱だったらしい。
多くの人が箱を求める理由はまだ分からないが、真実を確かめるには、一度箱を開けてみるしかないようだ。
悪魔の箱を開けてみたが、私たちの身には何も起こらなかった。
やはり私の思ったとおりだ。
これで箱の秘密に一歩近づいたが、答えを明確にするには、まだもう少し情報が必要だろう。
車掌さんの好意で、記念館の中に入る事ができるようになった。
悪魔の箱がフェルーゼン家に関係するものだった事はほぼ間違いない。
記念館に行き、その関係をもう少し詳しく確かめてみよう。
坑道には、かつてそこで働いていた人による記録書があるらしい。
この町の過去を知る事ができれば、そこから悪魔の箱の情報が見つかるかもしれない。
坑道に行ってみる事にしよう。
坑道の記録書によると、50年前に謎の鉱石が発見され、その直後から町に奇妙な病が流行したという。
それが、この町の呪いのうわさの原因だったようだ。
記録はそこで途切れていたが、それからの50年間で、この町に何があったのだろうか。
町の歴史を調べるうちに、色々な事が分かってきた。
しかし、まだ不可解な部分も残る。
全てを明らかにし、悪魔の箱の謎を解くには、やはり直接フェルーゼンの屋敷に行ってみるしかないようだ。
屋敷へと続く森の中で、ルークはお化けを見たという。
おそらくそれは錯覚だろうが、確かにこの町では、不思議な体験をする事が多い。
それはこの町の呪いのうわさとも、何か関係があるのだろうか。
フェルーゼンの屋敷に着くと、当主のアンソニーさんが私たちを迎えてくれた。
箱について詳しくは分からないという事だったが、今はこれ以上聞けそうにもない。
今夜はとりあえず屋敷に泊めてもらう事にしよう。
眠りから覚めると、我々は見知らぬ部屋にしばりつけられていた。
状況を飲み込めずにいると、アンソニーさんがやって来て、我々の血を吸う準備をするという。
彼が戻ってくる前に、縄を解いてここを脱出しなければ。
縄は思いの外、簡単に解く事ができた。
私たちが眠っている内に、もっとしっかりとしばる事もできたはずだが…。
とにかく今はこの部屋を出て、屋敷の出口を探す事にしよう。
城の地下には、坑道で見たものと同じ機械がたくさん設置してある。
どうやらこの城は地下で坑道とつながっているようだ。
もしかすると、それがこの町の…。
確かめている時間はないが、かなり謎の核心に近づいてきたようだ。
城の玄関にたどり着き、何とか出口を確保する事ができた。
しかし悪魔の箱の謎を解くためには、この城をさらに調べてみる必要がありそうだ。
やはり、それが終わるまでここを後にする事はできない。
城の中でカティアさんに出会った。
彼女もこの屋敷に来ていたとは。
そういえば、屋敷の寝室には彼女そっくりの女性の絵がかけてあった。
やはり彼女も、この家に何らかの関わりがある人物なのだろうか。
カティアさんと私たちの姿を見つけ、逆上したアンソニーさんが剣を抜いて切りかかってきた。
何とかその場にあった剣で応戦していると、見る見る彼の息が上がっていく。
やはり彼は、本当は…。
カティアさんはアンソニーさんが自分の祖父だという。
それを聞いたアンソニーさんは混乱し、屋敷を大きく破壊してしまった。
屋敷全体も崩壊を始めたようだ。
今はとにかく全員で、ここを脱出する事にしよう。
坑道から噴出したという謎の臭気。
それが幻を作り出し、町を華やかにみせていたようだ。
悪魔の箱にもその臭気が残り、手にした人々を次々と暗示にかけていたのだろう。
それが町と箱にまつわる、さまざまな伝説の真相だったようだ。
城を脱出したアンソニーさんは、老人の姿に戻っていた。
臭気の力が消えたのだろう。
悪魔の箱を返すと、彼は箱には特別な開け方があるという。
アンソニーさんのヒントを受けて、ルークが箱を開けてみるようだ。
中には何が入っているのだろう。
箱には一通の手紙が入っていた。
それはかつてのアンソニーさんへの、ソフィアさんからの返事だった。
彼はソフィアさんの本当の気持ちを知り、余生をカティアさんとゆっくり過ごしたいという。
彼は、ようやく失ったものを取り戻す事ができたようだ。